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映画『窓ぎわのトットちゃん』の感想レビュー

一言でいうと、後世に残したい映画作品ってこういう作品のことを言うん映画って思いました。

トモエ學園を舞台に繰り広げられる、子どもたちの物語

その裏で日本が戦争に進んで行く時代の流れ

この2つの要素がそれぞれがとてもとても丁寧に書かれていて、

人とのかかわり方を伝える教育的な物語としてだけでなく

反戦を伝える時代伝記的な物語としてもとても大事な作品だと思った。

↓以下内容に触れます

 

 

 

■ 學園の話の中でとても印象的だったのが、校長先生が女の先生に説教をしているシーン。そこで伝えている内容はもちろん、それを見ていたトットちゃんはなんて感じていたんだろう、と思った。

もしかして、あそこで話を聞いてしまったから、トットちゃんは腕相撲でまさあきちゃんを怒らせてしまったのかなと思った。

先生や大人が「分け隔てなく接する」「自尊心を損なわないように接する」って配慮をするのは、その人が社会的に弱者にであるという認識があるからだと思う。

トットちゃんのやさしさは違っていて、もともとそういった認識がないから、だれに対しても変わらず平等に接することにあると思う。それによってまさあきちゃんは救われたし、楽しい時間を過ごせた。

けど、あの話を聞いて、トットちゃんは「優しくしよう」「配慮をしよう」と思ってしまったんじゃないかな。

まさあきちゃんが救われていたのはそういう優しさじゃなかったから、トットちゃんがあそこで「大人がやるようなやさしさ」を出したことがとっても嫌なんだろうなとおもった。

校長先生はきっと、差や別を覚えてしまった大人ではできないことがあるから、男女も年齢もまぜこぜにして差をなくして、子供たちはなるべく差で人と接するんじゃなくて、人と人の裸の関わり合いを大事にしてほしかったんだと思う。

もちろんこれだけじゃなくて、いろんなエピソードを通して、人とのかかわり方を改めて考えさせられる映画だった。

 

■ 時代を描く部分だと映像としての完成度が素晴らしかった。

時代考証などはだいぶ丁寧に行ったとのことで、日用品から小物まで手が込んでいた。平成生まれの自分になんでそんなことわかるの、っていうと

東京ガスミュージアムで見た、戦前のガス浸透時のトースター

THE ALFEE坂崎幸之助がやっていた、ガラス展

こういったところで展示されていた「当時のもの」が描かれていたから。

平成生まれの自分からすると「あ、博物館で見たやつ」「あ、勉強したやつ」が出てきてた。

ほかにも、戦争に向けて進むにつれて徐々に金属のものが減っていったり、犬がいなくなったり、セリフや感情として語られなくても描かれるものがどんどん変わっていって、小物を見ているだけで面白かったし、同時に怖かった。

登場人物の描き方も、戦争が始まるとラジヲが告げた後の父の手の震えが印象的で、細かな手の震えだったり目線だったり、細かい演技が随所に描かれていて素晴らしかった。

 

もともとの話の素晴らしさだけでなく、映画が媒体としてもとても素晴らしい働きをしていて、作品として総じて完成度が高い、とてもとても良い映画でした。

また個人的には最近亡くなった祖父も同じような時代を生きていたんだなと思って、改めて90年生き抜いた祖父への畏敬の念を感じました。