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映画「オッペンハイマー」の感想レビュー アカデミー賞納得の傑作

映画という媒体でしかできない表現だ!

これはいい作品に共通して言えることかもしれない。

小説には小説の、舞台には舞台の、アニメにはアニメの、TVにはTVの

その媒体でないとできない表現というのがある。

 

逆に、これは映画じゃなくても本でもいいな、と思ってしまうということは、原案に魅力はあるけど、媒体としての魅力がないということ。

 

オッペンハイマー”映画”の魅力が存分に詰まっていて、それはスマホでは体験できない劇場を含めての表現であった。

そういった意味で、アカデミー賞を取ってのは大納得。

 

映画にしかできないって何ですか、という質問に対して一番わかりやすいのは音響だと思う。音響で爆風を感じさせられるのは映画(劇場)でしかできない表現だと思う。

爆発するシーンでの音響による爆風体験は、素直に恐ろしかった。

破壊力がじかに伝わってきて、とんでもない兵器を作っているんだというのが、眼だけでなく耳や肌を通じて伝わってきた。

さらに、恐ろしいと感じているオッペンハイマー自身の心も表現しており、手に負えないものを作ってしまった恐怖が乗り移ってくるようだった。

 

3時間越えという長さも、劇場での体験ならではだと思う。

「短い時間の映像作品は軒並み配信サービス系に取られてしまい、劇場作品の差別化のために3時間越えの長作が増えている」なんてネットの記事を読んだことがある。

ただ、長ければ長いほど観客は疲れてしまうし、正直集中の限界もあるl。

それこそRRRは大好きで3回見たが、あの怒涛の展開の連続でも自分は長いなと思った。

そのうえで、オッペンハイマーのすごいところは長さを感じさせなかったところだと思う。今まで見た3時間越えの作品の中で、最も時間を短く感じた作品だった。

核爆弾を作るところなど、結果も落ちも全部知っているのにもかかわらず、目が離せなかった。この、観客を飽きさせない技法のようなものは、おそらく素人の自分では気が付けない要素がたくさんあるんだろうなと思いつつ、あえて挙げるのであれば、これが「伝記もの」であることが理由だと思う。

フィクションの作品であれば、話の仕掛けで観客を魅了する。観客も「次は何が起こるんだろう?」と想像して、それに沿ったり裏切ったりして話が展開していく。

伝記ものを見るときに考えることは、「これが自分だったらどうしただろう」「なんでこの人はこうしたんだろう」ではないだろうか。

そして、オッペンハイマーという題材は、「自分がもし戦争の時代に生きていたら」「生まれた国が違っていたら」自分はどうしていたんだろうことを考えさせられる。

かつ、伝記ものであることを貫いている以上、この問いに対しての答えは提示されない。オッペンハイマー本人が出した答えのようなものは感じ取れるかもしれないが、自分がどう感じるべきなのか、どう整理したらいいのかは提示されない。(提示できるようなものでもないが)

だからこそ、脳の興奮状態が持続して、進めば進むほど、自分がその時代に生きているようで、どんどん答えが出なくなり、3時間では答えの出ない問いにとりむことになる。

 

俳優のすごさであったり、話の構成の妙であったり、評として取り上げればきりがないが、特に自分が感じたのが上記の2つであった。

是非、音響設備の良いところ、そしてなるべく没頭できるような劇場で見ていただけたらと思う。